マンガ

【絶対面白い漫画】マンガ大賞2019の二次ノミネート作品全部読んでみた。

ウワーッ
なちこです。

GEOにレンタルコミックを借りに行き、
セット価格で借りるために必ず10冊以上借り、
返しに行った時にはまたかならず10冊以上借りてくる、
つまり家には常にGEOのマンガが積んである
チェーンゲオコミッカー(?)のなちこです(^o^)/

そろそろ電子コミックの世界にも手を出さないと時代に乗り遅れそうですが、
まだまだ紙のマンガの魅力に取り憑かれています。

マンガ大賞2019の二次ノミネート作品全部読んでみた

さて、そんな、マンガ大好きっ子な私が、
数年前からずっとやってみたいことがありました。

それは……!

マンガ大賞にノミネートした作品、全部読んでみたい!!😍📚📚📚📚📚
ということ。

「マンガ大賞」をご存知ですか?
  
「マンガ大賞」は、マンガ好きの有志の方々によって、2008年から運営されている日本のマンガ賞です。
くわしくはこちらを!

マンガ大賞の選考対象は、前年の1月1日から12月31日に出版された
単行本の内、最大巻数が8巻までの作品です。
なお選考対象には電子書籍(最大巻数が8巻相当までの作品)も含みます。

一次選考では、各選考員が「人にぜひ薦めたいと思う作品を5作品」を選出。
二次選考では、一次選考の結果から得票数10位までの作品がノミネートされます。
選考員はその全てを読み、トップ3を選びます。
その結果を集計し、年の一推し『マンガ大賞』を決定します。

「選考対象は、最大巻数8巻まで」という設定が、秀逸だと思うんです……!✨
その理由はこちら。

だいたい一番単行本が出るのが早い週刊連載で、3ヶ月に1巻、新刊が出版されます。
年に4回×2年で、8巻です。
それだけの期間があれば、 人に勧めたいマンガの面白さは発揮されていると思います。
逆にそれ以上の長さのものは、面白さは世間に知れ渡っているだろう、
ということで、8巻までを対象にしました。
あと、これ以上長いと、気軽に手に取るには、ちょっと量がありすぎるかな、というのもあります。

わたくし、ひとりのマンガ好きとして、
この「マンガ大賞」に全幅の信頼を寄せていまして、
毎年発表されるのを楽しみにしているんですね。

これまでに大賞を受賞した作品を並べてみても、

2008年『岳』石塚真一
2009年『ちはやふる』末次由紀
2010年『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ
2011年『3月のライオン』羽海野チカ
2012年『銀の匙 Silver Spoon』 荒川弘
2013年『海街diary』吉田秋生
2014年『乙嫁語り』森薫
2015年『かくかくしかじか』東村アキコ
2016年『ゴールデンカムイ』野田サトル
2017年『響~小説家になる方法~』柳本光晴
2018年『BEASTARS』板垣巴留

すごーく納得なラインナップになっていて、
「おぬし……わかっておるな😏✨」って感じなんですよ。

二次ノミネート作品は、1次選考の得票数10位までなので、
同率も含めると、毎回10〜15作品くらいになります。

これがねぇ!
本当に面白そうな作品ばっかりなんですけど、
やっぱり、全部を読もうと思うと、けっこうお金や時間や気力が要るんですよぉ!!

マンガミュージアムで働いていたときに、
「ベストマンガ」という特集棚の準備を担当していたんですけど、
これは、去年一年間に日本国内のいろんな漫画賞を受賞した作品や
マンガランキングにランクインした作品ばかりを集めた棚で、
「今、注目の作品はまさにこれ!」って感じのコーナーだったんです。

その頃から、
そのうち絶対、マンガ大賞のノミネート作品を全部読んで、
自分なりの大賞を選んでみたい!って思ってたんですよね。

念願叶って、今年はとうとうそれを成し遂げました!!

マンガ大賞2019の二次ノミネート作品と読んだ巻数

詳しくは、公式HPを見てもらうと良いかと思いますが

マンガ大賞2019の二次ノミネート作品は、このとおり。
私が何巻まで読んだかも書いておきますね。

『1122(いいふうふ)』渡辺ペコ   →2巻まで読んだ(以下続刊)
『違国日記』ヤマシタトモコ      →2巻まで読んだ(以下続刊)
『彼方のアストラ』篠原健太      →5巻まで読んだ(5巻で完結)
『金剛寺さんは面倒臭い』とよ田みのる →2巻まで読んだ(以下続刊)
『ゴールデンゴールド』堀尾省太    →5巻まで読んだ(以下続刊)
『サザンと彗星の少女』赤瀬由里子   →上下巻読んだ(完結)
『ダンジョン飯』九井諒子       →2巻まで読んだ(以下続刊)
『凪のお暇』コナリミサト       →4巻まで読んだ(以下続刊)
『ハクメイとミコチ』樫木祐人     →2巻まで読んだ(以下続刊)
『ブルーピリオド』山口つばさ     →3巻まで読んだ(以下続刊)
『北北西に曇と往け』入江亜季     →2巻まで読んだ(以下続刊)
『ミステリと言う勿れ』田村由美    →3巻まで読んだ(以下続刊)
『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理 →2巻まで読んだ(以下続刊)

「あ、今年は全部読めるかも!?」と気づいたのが、3月9日。
その時点で、すでに読んだことがあった作品は
『ダンジョン飯』1巻、
『ミステリと言う勿れ』1〜3巻、
『ゴールデンゴールド』1〜5巻、
『金剛寺さんは面倒臭い』1巻、の
4作品10冊だけでした。

そこから気合い入れて、今日(3月18日)までに(明日19日が大賞発表&授賞式なので)、26冊どどどどどっと読みましたよ!!

私なりの「マンガ大賞2019」は……

さて、それでは、私なりの「マンガ大賞2019」を発表します!

ドロドロドロドロ
ドロドロドロドロ
ドロドロドロドロww

ジャーン!!

『彼方のアストラ』篠原健太!!


(アニメ化が決まっているそうで、ツイッターの画像をお借りしましたー)

どんな物語もそうかと思いますが、
マンガって、完結まで読んだか読んでないかで、作品評が違ってきたりするんですよね。
この作品は5巻で完結しているので、最後まで読んでから感想を書いた方がいいかな……と思ってたんですが、3巻前半まで読んだ感想と完結まで読んだ感想があまりにも違ってしまったので、両方ともそのまんま載せることにしました。

3巻前半まで読んだ感想

※ほんの〜りネタバレあるかも?

作者は『SKET DANCE』(スケット・ダンス)を描いた人です、と言うと「あぁ!」ってなる人が多いかもしれません。
私も、一時期、週刊少年ジャンプを(大人になってから再び)買っていた時期があり、『SKET DANCE』にも目を通していましたので、「あの人かー」ってなりました。

まずはとにかく、「マンガ表現」がうまい人やなーと感心。
少年漫画のお手本のような感じと言っても過言ではないのでは。
女の子もかわいいし(ボディラインの描き方など、フェミ的にツッコみたいことはあるけれど、(良いも悪いもとっぱらって)「少年に夢を与える」という観点では、私的にはセーフな判断をしました)、絵も綺麗でうまいし、演出も、文法から外れることなく、ストーリーもちゃんと面白い。深みもある。
キャラも魅力的で、エンターテイメントとして言うことなしな感じです。

私は昔、アニメ「絶対無敵ライジンオー」が好きだったんですけど、なんか、そういうのを観てたときのワクワク感と似てるよなーと思ったり(子どもたちがみんなで困難を乗り越えていく感じ?)、あと、サバイバルって意味では、アメリカのドラマ「LOST」にハマってた感覚ともすごく近いと感じましたね!(次々に襲いかかる謎!)

さらに個人的な感想ですが、知らない者同士が、ひとつ船の中で生活し、お互いのことを徐々に知っていったり、いろんなトラブルとか気まずさとかを乗り越えて、素の自分でバカなことしゃべくり合える仲間になっていくという展開は、私自身が体験した「ピースボートの船旅」ともかぶって、とても胸が熱くなりますね。

最終巻まで読んだ感想

※ネタバレなし。ラストの印象などは書いてますので、それがNGな方は飛ばしてね。

すごい。
これは予想以上だった。
素晴らしい。

なんか、いろいろ完璧じゃねーか!って思いました。

5巻で終わるのがもったいないくらいの構成だけど、5巻だからこそ、この密度になったのかもしれない。
小説や映画で培われてきた「SF文化」みたいなものがあるとして、それってのは、この(5巻完結という)長すぎない尺の方が合っているのかもなぁ、などと思ったりもしました。

特に、後半からの畳み掛けがやばい。
読者を楽しませてやろう、びっくりさせてやるぞ、という気迫が伝わってくる。
ぜひ、楽しんでだまされてほしいです。

「エンターテイメントとしてはすごいけど、さすがに感動してウルウル……とまではならなそうやな」とか思ってたんですけど、まんまと最後の最後で泣かされたし~~~😂
最終回のまとめ的なやつがとってもよいです。
巻末の作者のコメントも泣かせます。

ちょっと大げさだかもだけど、「出会えてよかった~~!!」って心底思える作品です!
この「出会えて、よかった✨」があるかないかが、けっこう、大賞の器かどうかを決するようなところがあったかもなぁ。

あとは、「わりと、誰にでもオススメできそうかどうか」も、けっこう考えましたね。
他のノミネート作品も、素晴らしい作品だらけだったんだけど、ターゲットが限られるかもな〜と感じるものも多かったんで。
「5巻以内で、最近何かおもしろい漫画ある?」って聞かれたら、しばらくはもう
絶対これをオススメするわ~😄

そして、これは絶対、アニメにも映画にも向いてるやーつ!
……と思いながら読んでたら、アニメ化は決まってるみたいですね!
おめでたい!

篠原健太先生、このマンガ描いてくれて、本当にありがとうございました☺️

その他の作品の感想

では、その他のノミネート作品の感想も置いておきますので、
読みたい人だけどうぞ!(・∀・)つ

『1122(いいふうふ)』渡辺ペコ

大人の女性向けの、「共感マンガ」という印象かな〜。

私は、この作者のマンガ、ちょっと苦手?かもしれないです。
『にこたま』っていう作品も、話題になってたので読んでみたことあるけど、なかなか読み進められなかったので。
んー、苦手ってほどじゃないけど、空気で読ませる部分の相性が合ってないのかもしれない。「共感マンガ」なのだとしたら、そこが合ってないとやっぱり読みにくいのかな?
好きなセリフとかもあるにはあるものの、なんとなーく「で? だから?」と思ってしまうのは、今の私がセックスレスじゃないからなのだろうかー。

でもきっと、これ好き、って人はきっとたくさんいると思う作品でした。
セックスレスをテーマにしたマンガとしては『あなたがしてくれなくても』(ハルノ晴)と読み比べてみるのもいいかもですね。

『違国日記』ヤマシタトモコ

個人的に、大賞に一番近かった、次点。
あくまでも個人的に。

というのは、これを読んでいて、槙生に対して
「お前は、私か?」と思うくらい、なんか性格とか行動とか思考とか似ているんですよ。
むちゃくちゃわかる、槙生ちゃんが。

以前、職場の同僚と
「子どもは生んでみたいが、子育てはできる気がしないなー」
「生まれたときにすでに高校生くらいの子どもだったらいいのにー」
みたいな話をしていたことがあって(逆に「生みたくないけど、育てたい」という同僚もいたので、「じゃあAちゃんが生んでBちゃんが育てればw」みたいなお約束の会話になりましたが)、この作品ってまさにそれの実験版(?)だなって思う。

自分が傷ついた経験を、ある程度大人としての視点から俯瞰して、次の世代に引き継がないように気遣いをする槙生の姿に、共感する私たち世代の人は多いと思う。男女問わず、ね。

『金剛寺さんは面倒くさい』とよ田みのる

『ラブロマ』『友だち100人できるかな』と、とよ田みのるファンをやってきた私としては、「うぉぉぉぉー!とよ田氏がマンガ大賞にノミネートしているぅぅぅー!」って感じですw

相変わらずのユニークでポップな画面に、独特のテンションで繰り広げられるギャグ、
それでいて、なんか一本芯が通ってるすがすがしさ、本当に好きです。
『ラブロマ』ですでに炸裂してた理屈っぽさが、またいい感じにグレードアップして活かされてますね。

ただ、ちょっとタイトルで損してる感じはあるかもな~って思いました。
金剛寺さんは、たしかに「めんどくさい」けど、めっちゃかわいいし、どちらかというとほっこりするような展開も多いので、タイトルで食わず嫌いの人は一度手にとってみてほしいです!

でも、知る人ぞ知るとよ田みのるって感じにしておきたいから、大賞はとらないでほしい感じwww

『ゴールデンゴールド』堀尾省太

これはねー、めっちゃおもしろい。
が、けっこうエグい(お金の話)。

んでもって、物語のキーになる「福の神」の見た目が、キモい。
キモいだけならまだしも……(略)。

絵とか、表情が好みかどうかって、読み進めていく要素としてけっこう大事でねー、なんか観てるだけでキモい絵って、あんまりずっと見ていたくはないですよね。
そういう意味では、あんまりオススメできない人もいるかもとも思いつつ、
でも、そのキモさが、人間の欲の深さを表現するのにすごく役に立ってる感があるんですよね。

どうなっていくのか読めなさ過ぎる点ではピカイチ。
毎巻、とても続きが気になる作品です。

『サザンと彗星の少女』赤瀬由里子

まず、全500ページ、オールカラー&水彩絵の具でフルアナログ作画というところが異色すぎて、この並びの中で評価するのは難しいんじゃないか!?って思っちゃいました。

担当編集者の方が書かれた
【連載開始から単行本化までの舞台裏】
というブログ記事をぜひ読んでから、「鑑賞」してほしいマンガです。

個人的な感想ですが、
こりゃー、あれだ、
ラムちゃんと、アトムと、ジブリと、最終兵器彼女を
ぐーるぐるとかき混ぜ合わせて、24色絵の具を好きなだけ足して、
んでアニメにして、そのアニメの「フィルムコミック」を読んでる感覚ー!!
って感じでしたw

そう、「フィルムコミック」感!!(懐かしい!昔よく読んだ!伝わるかな!?)

ストーリー自体は、どちらかというと絵本のようなお話に思えます。
ラブリーで、ストレートで、ファンタジックで、いい意味でちょっと古くさい。
担当編集が、
「頑張れば子どもたちでも買える定価にする!」
「沢山の子どもたち、そしてかつて子どもだった大人たちの誰もが気軽に手に取ってボロボロになるまで読んでほしい」と思った気持ちがわかります。

もし私が学校図書館司書だったら、ジブリのフィルムコミックと一緒に並べますね〜。
てか、ジブリが映画化したりは……しないかw

『ダンジョン飯』九井諒子

この作品は、2016年からノミネート&上位にランクインし続けてますが、なかなか大賞を獲れずにいる印象ですねー。
でも、まだ6巻だから、チャンスは2回くらいある気がする。

これはもうね、発想の勝利って感じで、めっちゃおもろいんやけど(いちいち科学や家庭科っぽく説明すんのがすげーいい)、やっぱり、ダンジョンが出てくるようなゲームをやったことのある人向けの「あるある」とかがネタとして使われているので、ファンタジーの「定番」がわかってないと、いまいち味わいきれないものがあるのが玉に瑕でしょうか。

あとは、「ダンジョンで、魔物を食べるグルメマンガ」というコンセプトそのものが主役だからなのか?、キャラがどれもみんなちょっと薄いかな〜と感じますね(2巻までしか読んでないからかもしれんけども)。
でも、くだらない小ネタが多くて、それがわろえるのは高評価ですw

1巻はずいぶん前に読んで、もう続きはいいかな〜と思ってたのですが、今回この記事を書くために1巻を読み返し、2巻まで読んだら、続きも読みたくなりましたので、十分に人にオススメできる作品だと思います。

『凪のお暇』コナリミサト

なちこ読了マンガ大賞2018にもノミネートさせたくらい、好きな作品です。

「空気読んじゃう」って、多くの日本人にとっては、持病みたいなもんで、そこから抜け出すのってけっこう大変だと思うんですけど、そのため方法って、とにかく「決めて、やるだけ」なんですよね。
主人公の凪が、めっちゃ勇気振り絞りながら、自分に自信をつけていくさまは、見てて勇気もらえるし、ほほえましいです。
まだまだメンヘラ的な部分はあって、かなりスローペースだし、危なっかしくて「おいおいおいおいおい…!」ってなることも多々あるけれどw、それも、リアリティがあって、よき。

貧乏料理もおいしそう!(私はこのマンガを読んで、豆苗を育ててみてしまった…!!笑)仕事をやめてニートしてた経験がある私にとっては、ぐんぐん減っていく貯金額とか、あるあるすぎ😂でしたww

そして、個人的には、「主婦向け(?)マイナーマンガ雑誌」だと認識していた「エレガンスEve」から、こんなヒット作品が生まれ出たことが、なんとなく感慨深かったりも。

『ハクメイとミコチ』樫木祐人

作者は、京都精華大学マンガ学部の卒業生です。
私にとっては、マンガミュージアムの特集棚で、京都精華大学卒業生の商業作品のコーナーを作ったときから、気になっていた作品。
(京都国際マンガミュージアムは、京都精華大学と京都市の共同事業なんです)

表紙の絵がとってもかわいくて、
「そのうち読むぞ、読むぞ」と思いながらも時間が経ってしまっていましたが、
今回、マンガ大賞のおかげで、やっと読めました。

とにかくまず、絵がめちゃめちゃ上手いですね。
そして、好みです。
ぽってりして、ごちゃごちゃしててかわいい。

基本、一話完結で、小人のハクメイとミコチの生活が描かれてます。
すごーくほっこりする感じ、かな。

ハクメイは大工で、ミコチは保存食とか服とかを手作りで作る人。
手仕事の暮らし、ええよなぁ♡って思いました。
疲れた夜に、寝る前にベッドで読みたい作品です。

『ブルーピリオド』山口つばさ

これね、中学の美術の授業で必読図書にした方がいいですね。マジで。

私は、小・中学生の頃はマンガ家になりたくて、イラストなんかも描いてみたりしてた時もあったけど、自分の下手さがわかってやめてしまった過去を持っています(そういう人、けっこういるんじゃないでしょうか)。
でも、大人になった今ならわかるんですよ。
私に絵の才能がなかったわけではなくて、当時の私の周りに「絵は、描き方を教われば上手くなる」ということを教えてくれる大人がいなかっただけだったんだと。

私は、マンガ大賞2015も受賞している 東村アキコさんの『かくかくしかじか』を読んで、絵を描く人にとって、デッサンがどれほど大切かということはわかったものの、じゃあ、デッサンって何をしてるのさ?という疑問は残ったんですよね。
それに対する回答を、またもマンガで示してくれたのが、この作品だなぁと思います。
あとは、「いい絵」って何なのか、みたいな、誰もが一度は考えたことがある疑問にも、実際の作品を例示しながら、答えてくれています。

この先マンガという表現方法が世界中に広まっていくため(これは、私のひとつの夢)には、描き手がどんどん増えていかないといけなんだけど、「絵って、どうせ才能なんでしょ」って思ってる人が多いと、描き手が爆発的に増えていくのは無理なんですよね。
「いい絵を描けるかどうかは、才能も関係なくはないけど、ある程度までは、技術だ」(つまり、学べば身につけることができる)
このことを知らしめるための作品としては、かなり素晴らしい役割を果たしていると思います。
藝大現役合格はマンガらしい極端なゴール設定ではあるけど、
どこまでも、「初心者が、『絵を描いてみようかな』と思わせる作品」であってほしいなぁ。
今後の展開に期待。

『北北西に曇と往け』入江亜季

やー、やっぱり入江さんの絵、素敵です。
絵を楽しめるマンガですね。
私は昔は、マンガってただストーリーを追って楽しんでたんですけど、マンガミュージアムで働き始めてから、同僚の影響を受けて、絵を楽しむっていうことを知りました(同僚たちに感謝!)。

この作品、舞台がまさかのアイスランド。
アイスランドは、ちょっと思い入れがある場所なので、個人的に贅沢ですわ〜。
入江亜季が描くアイスランド。
そして、フランス人の恋愛w(セクシーさが似合いすぎる~)

17歳とは思えない、大人っぽい主人公。
祖父がフランス人。
モノと会話ができる?
ときどき探偵。
設定も面白い。

ストーリーも、絵のスタイルも、すごくスタイリッシュなんだけど、
翳(かげ)がきちんと入っていて、立体的というのかな、
ただの「いいマンガ」では終わらない深みがありそうですね。

2巻の観光編を読んで、めーっちゃアイスランド行きたくなりましたねー。

『ミステリと言う勿れ』田村由美

田村由美さんは、『7SEEDS』で、確固たる地位を築いたと思う(←私の中で)。
なので、新作は本当に楽しみでした。

そして、それを裏切らない出来…!!
素晴らしい!!
「ミステリと言う勿れ」というタイトルですが、けっこう割とミステリーですw

整(ととのう)くんっていう名前も、最高ですねw
実際に自分の隣にいたら、絶対に友達にはならないと思うんですがw、ほんまにいいキャラしてるなと思います。
「実はみんな疑問に思ったことあるんだけど、誰も何も言わないから、言わずにいるうちに、それが当たり前になってしまった」みたいなことって、世の中にいろいろあると思うんですけど、それをポロポロ言ってくれちゃうんですよ、この主人公はー。
(つまり、空気は読めないが、読者にとっては溜飲下げてくれる存在)

人によっては、言われてみて初めて気づくこともあるでしょうね。
特に1巻では、女性が日常的に被っている「小さな差別」みたいなもの(ありふれているので気づきにくいやつ)にフォーカスしてくれていたりして、田村由美さんのフェミニズム心が伝わってくるところも高評価。

ま、ストーリー展開にちょっと強引なところがあるのは、相変わらずちょい気になるんですがw、ストーリーを楽しむ邪魔になるほどではないかな。

新刊が出たら、(1ヶ月経たないと入荷されない)レンタルコミックではなく、書店で買うくらい、気に入っている作品です。

『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理

こうの史代さんの影響が見られるマンガですねぇ。

書店でバイトをする“さえない”女子高生が、BL作品を通して近所のおばあちゃんとなんか知らんけど仲良くなっていく、っていうストーリーは、ほんま素敵やと思います。

女子高生・うららよりも、おばあちゃん・雪さんが主人公な感じがあるので、
おざわゆきさんの『傘寿まり子』みたいに、「おばあちゃんマンガ」と言えるのかもな~。

おばあちゃん×BL(ボーイズ・ラブ)っていう発想も素晴らしいけど、私がうれしくてニヤニヤするのは、やっぱりこんな風に、「マンガ文化」(の一部分)そのものをメタ認知して物語のテーマにするという構造。
(つまり、ある意味「BLマンガ」というジャンルが主人公であるとも言える)
一緒に同人誌即売会に行ったり、コミックスや雑誌を貸し借りし合ったり、そういう交流が、(属性を超えて)マンガ好きの心をつなぐということを、マンガで描き残してくれて、うれしくなるんです。

あと、ピンポイントですけど、2巻で、うららが幼馴染・紡の彼女と交わす
「今日 紡と廊下で何しゃべってたの?」
「へっ!? え〜と 特になんということはない よ 四方山話というか…」
「へー…いいな…私も それしたい」
っての、めちゃくちゃわかるわー、と思いました。(彼女の側の気持ちがね)
高校生だなぁ……。

総括

やー、全部読んでくれた方、ありがとうございました。

さすがマンガ大賞、はずれがない!(←私にとっての、って意味です)
全作品読むのも、この記事を書くのも、すげー楽しかったです。

これは……マンガ大賞が続く限り毎年やろう!👊✨と思いました。

あとは、「感想って、生ものなんだなぁ」と、しみじみ思いましたね。
読んだことがありさえすれば、感想なんていつでも言えると思っていたんですけど、こうしてたくさん読んで、書こうとしてみると、
やっぱり、読んでから時間があくと、せっかく生まれた感想は、多かれ少なかれ、どこかに雲散霧消してしまっているものだなぁ、と感じます。
面白かったかつまらなかったか、好きか嫌いかは言えても、何がどう……という部分は、言葉が消えてしまう。
それって、とてももったいない。
「私よ、ほんまに、一言でもいいから、その時の、その作品に対してしか書けない感想の言葉を、書き残しておいてほしい。」と心から思いました。
めんどうでも。
いや、むしろ、習慣にして、めんどうじゃない人生にしてほしい。

だって、これから、もっともっとマンガを読んでいけばいくほど、一期一会の作品は増えていくのですからね。

マンガ大賞2019授賞式は、
2019/3/19(火)15時からの開催だそうです!